『N』ー忍びで候うー
「ねぇ、」

Nを出て暫く行くと、三田は研究室に戻ると足早に去って行った。
今は次郎と並んで歩いている。俺は山へ戻るため着替えを済ましていた。
隣を歩く次郎を見た。

「七花には言わないの?」

次郎がわざとらしく眉をあげて見せる。
「自分の身内の救出だろ?進行具合くらい知りたいんじゃないかと思って。、、あ、でも、俺は七花のことをよく知らないからどこまで話していいものかとか、メンタルが強いかとかわかんないからさ。さっき投げられた感じからは本番に強そうだけど。」
「もう一度試してみればまた何かわかるんじゃないか?」
「おいおいおい。」
もうごめんだ、とばかりに両手を前に出して見せた。
「言わないつもりだ。さっきの電話も六車が仕込んだものだからな。七花を外すように。」
「んー、そっか。」
「先代の救出を何より無事に成し遂げるためだ。」
「オッケー。」

次郎は拳を見せ、キャップを深くかぶった。
「早く助け出してやりたい。」
「俺もだ。」





表通り手前まで来ていた。
「大学は春休みだろう?しばらく通わないのか?」
「サークル!いくつも入ってるからさ。」

ひらひらと手を振ると次郎は通りの人ごみに混じっていった。

一花は脇道へと姿を消した。

< 78 / 159 >

この作品をシェア

pagetop