『N』ー忍びで候うー
頭に雷が落ちたみたいだった。


麻痺するようだった。



「、、、ぇ」




「人気が出すぎると困ってしまうんです。」
六車の困った顔。郷太の残念そうな、いたわるような顔。
「ここは忍者の事務所ですからね。何かの時にみんなが隠れられるように、作戦を練れるように、隠れ蓑になれる場所でなければ、彼らを守ることができません。

ほどほどでいいんです。目立ってはいけないんです。」

抱えていた泡だて器とボールをカウンターに置いた。


「、、そっ、、う、、」
納得がいく理由だった
『忍者』すっかり忘れていた。ここはその事務所だったのに。



鼻の奥がつーんとしてきた。

慌てて鼻をすする。
「やだ、、、なんか、、、」

「大丈夫?」


起き上がった郷太がそっと頭に触れた。

そうされると、余計に泣きそうになってくる。

「だ、だいじょうぶっ!」
慌ててその手から離れて笑顔を作って見せる。

だめだめ、ここで泣いちゃ、、



「、、これだけ、焼いちゃうね。最後のケーキ。」
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