『N』ー忍びで候うー
涙のしずくがケーキの箱にも落ちて跡をつけていた。

「これ、最後のケーキなの。
一花、食べてくれない?」

「最後にする必要はない。やりたいことならこれからも追いかけ続ければいい。」

「、、そうだね、、家でも、焼けるしね。」

「場所が変わっても、お前が追いかけ続ければ、いつかまた、、」

「そう、だね、、そうだよね。

パティシェになるのもいいかな、、。」

「よかったな。いい体験ができて。」
一花は頷いてくれた。

「そうだね。」
素直にそう思えた。


すーっと、心が晴れていくようだった。
思いっきり泣いて、涙も全部出し切ったようだった。
すると笑顔が浮かんでいた。




「俺一人には多すぎるようだが、、」
箱を開けた一花は少しためらってから、ケーキをひとつ手にした。
「ひとつ、もらおう。」

最後だと思ったので、デコレーションにありったけの果物を盛りつけ、1人用のカップケーキを4つ作っていた。
ベリーにナッツ、くるみとカラメル、チョコチップとピスタチオ、抹茶とあずき。







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