『N』ー忍びで候うー
「うまい。」
一花が選んだのはクルミにカラメルのかかったカップケーキだった。

「ほんと?甘すぎない?」

二口目。

かりっとクルミの音。
「いや、うまい。」



「何かおかしいか?」
思わず小さく笑いが漏れてしまう。

「ごめん、一花、もしかして無理して食べてくれてる?
なんとなく、あまいの苦手だったりしないのかなと思って。これね、残ってた材料いろいろ全部使ったから、相当甘いと思うんだけど、、」

「いや、うまい。」
一花が親指で口元を拭った。
「甘い物は割と好きだ。たまにしか食べないがな。」

「え?!そうなの?好きなの?」
思わず聞き返してしまう。だって意外すぎて。

「ああ、好きだ。」
真顔で即答される。

また花びらが、今度は一花の肩に舞い降りてきた。あたしはやっと見上げていた。

「身体を鍛えているとエネルギーを使うからな。」

「そっかぁ。。」
見上げると、一花の頭上に薄いピンクの夜桜がとてもきれいだった。


「あと3つはさすがに食べられない。」
他のも食べてみて、と言う前に箱は閉じられてしまった。



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