『N』ー忍びで候うー
「ふふ。

僕の役割は聞いてる?


いろんなところに入り込んで話を聞いたり、意図を探ったり、言葉以外のところからも情報をとってくること。

だから、こうやって常に周りを見て『あの人は、この人は、』ってやるのが訓練になるわけ。

確かな情報を得られるようにこれも日々鍛錬なんだよ。体を鍛えるだけが忍者の特訓じゃないよ。」

いつもの軽い感じとは違っていた。

「ぷ、、そんなにびっくりしないで。」
くしゃ、っと表情を崩すとあたしの肩をぽんと叩いた。




「あー、だめだなあ。

訓練だって言ってるのに、僕だからかまるで訓練だと思ってない?

僕だってこーんな天気のいい日に公園で、、

デートだったらいいのに!」

どきっ。

「え?!」
なに、あたしの今の『どきっ』て。
胸に手を当てる。落ち着いて、、
あたしは今ここに忍者の訓練で来たわけで。。
しかも別にデートって言ったからって、あたしとってわけじゃないし、、


慌ててしまったあたしが面白かったのか、郷太はまた大型犬がじゃれるようにあたしにじゃれつき始めていた。
そんな姿はいつもの郷太だった。


急に真面目な顔をしたり、からかうようなことを言ったり、どれが本当の郷太かわからない。

「さっきの真面目な郷太はどこいったの?」
ふぅ、、
そう言いつつ、あたしは安堵していた。

「へー、さっきの真面目な感じがよかった?
軽い感じはだめ?ほら、親しみやすくない?」
肩を組まれ、ぐっと郷太が近くなる。

誰とでもすぐに馴染めてしまいそうな笑顔を向けてくる。





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