サソリちゃん
「………優しくないよ。
優しい人は、あなたなんだよ」
わたしは、ゆっくりゆっくり、彼を思い出の場所に運んでゆく。
−−−−彼がいたら、きっと何か変わっていたのだろうか。
打ち明ければ、こんな結末は迎えなかっただろうか。
他に最善な方法が見つけることができたのだろうか。
……それも、
今となっては、もう叶わないこと。
でも、少しくらい。
ちょっとくらいは。
わたしは今、弱いから、期待してしまうことを許してほしい。
そうして、あわよくば、あの世があるのなら。
再会する機会がほしいのだ。
そうして、許されることではないと思うけれど、謝りたい。
打ち明けたい。
………誠に身勝手なお願いだけれど。
彼を土に埋めながら、
わたしはこのどうしようもない世の中で、ひっそりと願った。