ハイスクール・カンパニー
海を寝かせてから、伊都は陸に声をかける。出来るだけ責めないように心がける。

「今日、海どうしてたと思う?」

「知らない」

「お兄ちゃんに邪魔だって言われて、公園で一人で遊んでた。私がいるときは、海に邪魔だって言わなかったよね」

陸は、黙ったまま、じっとしている

いつの間にか陸は、大きくなって、伊都の背丈をはるかに追い越して、下から見上げなければならない。

「何があったのか、言ってごらん」


「この間、父さんと二人で話してるの聞いたんだ。この家で大学まで行けるのは、一人だって…」

「それで?」

「姉ちゃん、行くって言ってたから、僕は…ダメだって…」
陸は、泣き出した。
ごめん、陸。
あんたの夢、お姉ちゃんが奪うつもりないのに。

「陸は、将来何がしたいの?」

「僕は…研究出来れば、病気の…」

「うん、母さんダメだった時、そう約束してたもんね」

「医学部なら、私立は無理だけど国立なら行けるよ」

「姉ちゃんは?」

「陸、陸がお姉ちゃんの成績越えたら、大学行けるように考えてあげる」

「ええっ、だって…」

「そのかわり、海のこと頼むね。陸、どんなことがあっても、怒りを家族に向けてはダメよ。家には、もう、家族をまとめてくれてた母さんはいないんだから」

「うん」
ごめんね、心がつぶれるほど悩んだでしょう陸。
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