ハイスクール・カンパニー
「どうかしましたか?」
「いや、楽しいなと思って」
「具合よくなったんですか?それは、よかったです」
あれだけの剣幕で威嚇したのに、彼女はまったくの自分のペースだ。
まったくマイペースで進んでいく。
俺のような、ちっぽけな人間なんか構わずに。
がんじがらめの人間なんか気にせずに。
そして、彼女は俺を見ていう。
「全部食べられましたか?よかった」
「不思議と君が作ったものなら、何でも食べられそうだ」
「そうですか。それはよかった」
こんなに目の前に欲しいものがあるのに。
理貴は、手を伸ばして伊都の細い腕をつかまえた。
「ずっと、ここにいて」
「はい、ても、今日は、学校にいかなければならないので、帰りにまた寄りますね」
ほら、こんなに簡単に我がままを言うことができる。
理貴は観念した。
丸めた洗濯物のように、あっという間に心を持っていかれた。
彼女に触れていたいのは、彼女が好きだから。
彼女はいとも簡単に心を持って行ってしまった。
着替えを済ませ、再び彼女の手をとった。
伊都は、理貴が眠るまで手を握っていてくれた。