ハイスクール・カンパニー
休みの途中に学校あるの面倒だよね。
そうだよね。
周りからそういう声が聞こえて来る。
「久し振り、沙希ちゃん」
「うん。久し振り。そういえば、透君と仲直りした?」
沙希ちゃんが振り返って言った。
「それが、全然話できてない……」
昨日は、熱にうなされる相手を振りほどけなかったとはいえ、理貴にキスされてしまった。伊都は、理貴が辛そうにしてるから、止めてくださいと言えなかった。
キスだけじゃない。理貴の手の後の感覚が伊都の肌に残っていて、未だに触れられているみたいで戸惑ってしまう。
「大丈夫なの?透君のクラスずいぶん仲がよくて、休みのうちもみんなで、出かけてるよ」
「そうなんだ。どうやって声をかけていいのか分からない。何だか……遠い世界にいるみたい」
「いいの、そんなこと言ってて?休みのうちに、透君目当ての女の子たちが、クラス盛り上げてるって聞いたよ」
「透、目当て?ほんとに?すごいなあ。格好いいもんね。透」
「ふざけてる場合じゃないよ。後でどうなっても知らないよ」
「ちゃんと説明するよ」
といっても、透にとっていい話はない。
伊都は、透のために体と時間を用意しなければならない。
でも、伊都にはそんな気力は残っていない。
時間があるなら、お金に替えたい。
それに、会社に行くのが楽しい。理貴さんの力になりたいから。
たとえあんな風に、もう一度、求められたとしても。