ハイスクール・カンパニー
二人がやりあってるのを、葵が面白そうに見ている。
「なにやってんの、ケンサク?」
葵がケンサクの後ろからのぞいた。
「葵さんが何で、日本語みたいにややこしい言語をクリアしてんのか、不思議でしょうがない」ケンサクが振り返って言う。
「私、これでも日本語の教育は、家庭教師をつけて向こうできちんと受けてきたもの。もしかしたら、日本に行く可能あったし」
葵の母方の実家は、着物や伝統的な織物にかかわる仕事をしている。
「じゃあ、多樹さんは?」伊都が聞く。
「多樹は論外よ。言語を構築するシステムは複雑なほど面白いんですって。今では、英語の先生も、古典の先生も、多樹の質問が、恐ろしく細かいから、彼がテストを受けに来ると緊張するんですって」
と葵がうんざりしながらいう。
「僕んちだけだね。日常を英語で話してて、日本語とは無縁の生活を送ってたのは」
「えっ?ってことは、半年足らずでそんなに日本語が話せるの?」
伊都が目を丸くする。
「まあ、話すだけならね」
「すごいなあ。初めて尊敬できた。ケンサクサンのこと」
伊都がしみじみ言う。
「えっ…」
「お前、なに赤くなってんだよ」ユウに言われた。