ハイスクール・カンパニー
自宅に帰って、伊都は、すぐに陸を呼んだ。
陸の能力が認められて、伊都は嬉しかった。
「ねえ、陸、編入試験受けてみない?」
「それで、この間の人が来たんだ」
陸の会話のスピードに慣れるのは、大変だ。
人より、倍のスピードで話が進んでいく。
そうして、陸は、すっかりパソコンを使いこなしている。
「鷹揚中学のなんだけど」
「鷹揚?鷹揚って、無理だよ。きっと必要なのは、授業料たけじゃないよ」
「大学までの学費は全額免除。もちろん、どんな学部、医学部にも行けるし、他には何も必要ないって理貴さんが」
「理貴って、この間の?」
「うん」
「そう、鷹揚の医学部って、いくらかかるの」
「さあ、分からないけど、きっとすごいお金よ。でも、優秀なら学費なんてすぐに回収できるから、早いうちからそういう人材が欲しいんですって」
「俺にはそんなだけの価値があるのか……」
「陸なら大丈夫だって。それに……」
「わかったよ。試験は受けるから。それより、姉さんはそれでいいの?俺だけじゃなく、親父まで世話になったら、あいつから逃げられないぜ」
「理貴さんが、何かするの?」
やっぱり、話についていけない。
陸についていけないのは、もう何年も前からだけど。
いったい、理貴と陸はいつ会話をしてるの?
伊都は首をひねる。
「やっぱりわかってない。あいつ姉さんの周りを手懐けて、逆らえなくしてるじゃないか」
伊都は、笑った。
「考え過ぎだって。理貴さんがそんな面倒なことする必要ないもの」
「理由はわからないけど、姉さんがいいなら、俺に依存はないよ」
「わかった。理貴さんに伝えとく」
「姉さんは、幸せ?」
陸は、幼馴染と暮らす方が幸せなんじゃないかという考えを、口に出さずに引っ込めた。
「うん。そうしてよ。家族で一緒にいられて、将来の心配が無くなるんだもの」