ハイスクール・カンパニー
緊張した場面で、多樹の低くてのんびりした声がした。
「ちょっと待って。最後までちゃんと確認したのか?」
多樹が割って入った。
葵と理貴に向かって。
ゆったりと。
こいつは、いつも冷静だ。
それに、体が大きいから威圧感もある。
多樹は、普段物静かに人の話を聞いている。その彼が一度彼が口を開くと、どういう訳かみんな話すのを中断して、多樹の意見に耳を傾ける。
怒らせると怖いのは、理貴も同じだが、多樹を怒らせようとする命知らずは、滅多にいない。
噂では、護身術か武道に通じていて、素手で人を殺せると言われてる。
葵も素直に応じる。
「ええ。もちろんよ」
多樹は、丁寧にペンでアンダーラインを引いていた。
「よく見ろよ、ここ、みんなの意見を総合するとって、ちゃんと書いてあるだろ?」
多樹が助け舟を出した。
ユウは助かったという顔をした。
「どういうこと?」葵が素直に多樹の呼びかけに応じる。
「伊都ちゃんの声にしたほうがいいって言うのは、アレンの意見じゃなくて、周りの反応だって言うこと」
ユウがまとめた。
「本当にそうかしら」葵は、まだ収まらない。
「心配なら、本人に聞けよ」