ハイスクール・カンパニー


伊都は、退屈はしていなかった。


こういうのは、タレントさんとかモデルさんとかちゃんと訓練を受けた人がやるものじゃないかなと伊都は思う。

なるべく、はっきりと言ったつもりだけど、台詞がちゃんと聞こえているか心配だった。


伊都は、自分が冗談を言ったことに、理貴が気付いてくれたかなと思って口にした。


「ここは、笑うところですよ」



画面の伊都が台詞をいう前に、
本物の伊都が先に台詞を言った。


伊都は理貴のすぐ横に立って見ていた。


「ええっ?」


人がいるとは思わなかった。
理貴は不意をつかれて、声の主の方を振り返った。



伊都が自分に話しかけてるのに、
それに答えることができない。



言葉が出てこなかった。

ただ、懐かしい感じがした。祖父母と過ごしてた頃の貴重な思い出のような、とても心地よい。


理貴は、口を開きかけたまま、伊都の顔を見つめている。

どうして、撮り直した映像なんか、何度も見ようと思ったのか?

何度見ても、またすぐに見たくなるのか。



伊都が変に思うとわかってても、

自分の衝動を、止めることがなできなかった。

伊都の中に祖母の面影を見つけたのだろうか?

早くに亡くなってしまって、今でも一番に会いたいと思う人に。
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