ハイスクール・カンパニー
海外の生活が長いから、好みは洋風だろうと思ったら、理貴はずっと和食でもいいと言って、
伊都を驚かせた。
味噌汁、魚の干物、卵焼き、野菜の和え物、今日は最初で少ない量を多めに出した。理貴が何を好むか見たいと思ったからだ。
「小さい頃、まだ日本に住んでいたんだ。俺、祖母に育てられたから、すごいお祖母ちゃん子だよ。だから、伊都が作ってくれる食事は懐かしい」
理貴さんの味の基礎は、お婆ちゃんなんだと思うと嬉しかった。
結局、どのおかずが好きかなんてわからなかった。
みんな均等に箸をつけたから。
理貴はきれいに箸を使う。いちいち所作がきれいなのも上品なお祖母さんに躾けられたんだなあと思えば、納得できる。
「理貴さんは、いったい何時間睡眠とっているんですか?」
「さあ、四時間は寝てると思う」
「それだけ?」
「短いかな」
「何時に起きてるんですか?」
「五時には」
「早すぎです。お年寄りみたい」
「年寄りか!アハハ、それはひどいな。でも、みんなが来る前に、いろいろ準備をしたり、行き詰まった件の対策を考えるのに、そのくらいの時間が要る」
「だったら、もっと早くお休みになれば。十時になったら強制的に私が、ベットに連れて行きましょうか?」さっきのお返しのつもりで伊都は口を滑らせてしまった。
「えっ?」
今、理貴が微かに戸惑ったように見えた。
それに気づいて伊都が聞く。
「私、変なこといいましたか?」
「それじゃ、子供みたいじゃないか」
理貴がうつむいて言った。
「本当ですね。弟と同じでした」