あの空の君へ
♠届け
香side

しっかりしろ、俺。結衣と仲直りするんだ。
許してくれるかな…。
結衣…。どこまで行ったんだよ。
俺は走りながら愛しい人の背中を探した。

((私、嫌なこととかあると屋上に行くんです。なんだか、心が落ち着く気がして。))

屋上!
「はぁ、はぁ、」
結衣…。見つけた。
「結衣…。」
「こ、香さん。」
結衣は泣いていた。
「ごめん、俺。黙ってて。」
「大丈夫です。」
「お前に避けられるのが嫌で…。」
「だから、大丈夫ですから。」
そう言って結衣はこの場から離れようとする。
俺は結衣の手を掴み彼女を見つめた。
すると、結衣はうつむきながらゆっくりと体を向けた。
「俺さ。結衣が好きだから。好きになったから、どうにか近づこうとしたらお前を押し倒してた。
その後、やっちまったってすげー後悔した。だから、早く謝りたくて…。」
「私は、その事で逃げたんじゃなくて兄弟だってことを言ってくれなかったことが悲しかったんです。」
「悲しかった?」
「香さんが好きです。新のお兄さんのあなたが。」
「…え?」
俺は耳を疑った。
「だけど、私だけ幸せになんてなれません。新の存在がある限り…。」
「ちょっと待って!す、好きって…。」
「だから、あなたが好きなんです。」
「あの、いや、その…。」
「あなたが私の事を好きじゃないとしても、好きなんです。何度も言わせないでください。」
「ごめん。実は俺も…」
「でも、私。いいんです。付き合えなくても。諦めます。」
「え?でも…」
「お話、終わりですよね?じゃあ、私行きます。そろそろ戻らないと。」
「あ、結衣!」
彼女は中へ戻ってしまった。
「なんだよ…。好きって言っといて、諦めるとか…。俺の気持ちはどうなるんだよ。
俺はずっと前からお前の事好きなのに。どうして気づいてくれないんだよ…。結衣…。」
それから俺は、少しの間屋上にいた。

♪♪♪~
電話だ。
「…もしもし?」
「こんちには。坂上です。」
「あ、どうも。」
「いきなりなんですけど、結衣の事ほっといてあげて欲しいんです。」
「…え?」
俺は耳を疑った。
「どういう事ですか?」
「今、結衣から電話があってもう来ないで欲しいって言っといてって言われたんです。」
「…そうですか」
「結衣と何かありましたか?」
「俺…。」
俺は今まで隠していたことを全部坂上さんに話した。
「そういうことですか。だから、結衣…。」
「結衣がどうかしたんですか?」
「泣いてたんですよ。この話をしてたとき。本人は否定してましたけどね。」
「そうですか。ありがとうございます。結衣ともう一度話してみます。」
「あ。はい」
俺は電話を切った後今度は結衣の病室へと走り始めた。
…お前が好き。この一言を伝えるために。

「結衣…。」
「香さん…。あの、凛から電話ありませんでしたか?」
「あぁ。あったよ。ずいぶん生意気なこと言ってたって。」
「すみません。でもなんで…。」
「お前、全然気付いてなさそうだったから話に来てやった。」
「話すって、何を…」
「俺も。俺もお前が好きだ。」
「…え?」
「お前が好きだ。」
お前のためだったら何度でも言ってやる。
「香さん…。」
俺はすぐに彼女を抱き締めた。
「結衣…。」
強く、強く。
でも、結衣は自分の体を引き剥がした。
「結衣?どうした?」
「やっぱり、新に悪いです。私だけ恋をして、私だけ幸せになるのは。そんなことしたら新はきっと悲しみます。」
「結衣…。」
「ごめんなさい。1人で考えたいので帰ってくれませんか…?すみません。」
「わかった、じゃあまた明日。」





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