あの空の君へ
第三章
♠新しい出会い
新の死から、5年がたった。
子供も幼稚園に入り私もある出版社で働き始めた。
5ヶ月くらい働いているとある男の人に出会った。
その人の名前は高橋香(こう)さん。
私の3つ上の職場の先輩。
香さんはとても優しくて新に似ている。
不思議なことに苗字も一緒だった。
こんなことがあるものなんだと実感した。
私はこの事を電話で凛話した。
「へぇー、そんなことがあるんだね。もしかして生まれ変わりだったりして…。」
「もぉー、変なこと言わないでよ。」
「まさか、好きとか?」
「それはない。絶対にない。」
「えー?何で?」
「私は新を愛してるから。」
「でもさ、新が亡くなってから5年だよ?子供もいるしさ。これから先結衣だけじゃ生活苦しくなるよ?」
「そうだけど、新以外の人を好きになんてなれないよ。」
なっちゃいけないんだ。
新がかわいそうだよ。
私だけ幸せになんてなれない。
そんな思いから私の恋は進まずにいた。
「結衣ー?」
「あ、はい!」
香さんが私に話しかけてきた。
私はボーッとしていて気づかなかった。
「どうした?最近おかしいぞ?体調悪いのか?」
「いえ、そんなことは…。」
「顔色も悪いし、熱でもあるんじゃないのか?」
すると、香さんは私の額と自分の額を近付けた。
ドンッ!!!
私は香さんを押してしまった。
そのせいで香さんは床に尻餅をついてしまった。
「あ。あの…ごめんなさい!」
「あ、いや俺は大丈夫だけど。お前本当に大丈夫か?熱かったぞ。熱あるんじゃないか?」
「だいじょうぶ…で…す。」
だんだん香さんが遠くなって二重に見えてしまう…。
どうしたんだろう。私。
「あ、おい!!!」
私は香さんの、その言葉を最後に意識を失ってしまった。
「…ぃ、ゅぃ、結衣!」
誰かが私の名前を呼んでる。この声は…りん。凛だ!
「り、ん…。ここは…?」
「結衣!大丈夫?病院だよ。」
「うん、ありがとう。でもなんで。」
「もう、ビックリしたんだから。いきなり倒れたってあんたの出版社から電話かかってきて。なんか、家族が分からなかったから一番履歴の多い所に電話したら私だったの。しかし、あんた香さんに感謝しなさいよ。一緒に救急車にまで乗って連れてきてくれたんだから。」
「そっかぁ、ごめんね。心配かけて。うん、お礼言っとくね。」
「まぁ、大丈夫ならいいけど。ごめん。私颯太に電話してくる。アイツも心配してたから。」
「うん、わかった。ありがとうって伝えて。」
そう言って、病室を出ていった。
すると、それと同時に香さんが入ってきた。
「結衣、大丈夫か?入るぞ。」
「あ、香さん。ありがとうございました。」
「あぁ、いいよ。全然。」
「あの、私。すいません。香さんを突き飛ばしてしまって…。」
「気にしないで、大丈夫だから。」
「すいません。」
…。沈黙が続いた。
するといいタイミングで
「結衣。ごめん。なんか色々あって大変らしいから私行かなきゃいけなくて…。」
「あ、僕見てますから。どうぞ行って下さい。」
「でも…。」
「おきになさらず。」
「ありがとうございます。じゃあ、またね。結衣。」
「うん。バイバイ。」
私が入る隙間もなく
香さんと凛の会話が終わってしまった。
すると、凛が出ていって少しすると今度は主治医らしき人が入ってきた。
「岡本さん。お体は大丈夫ですか?」
「あ、はい。大丈夫です。」
「少しお話があるのですがご家族の方に連絡を取ってもらえるでしょうか?」
「あの、私…。」
「僕じゃダメですかね?」
「あなたは?」
「この子の上司です。」
「うーん。私は良いのですが岡本さんは…。」
「結衣。いいよな?」
「あ、はい。お願いします。」
私が香さんにお願いした理由。
それは、私の両親はいないから。
2年前。
両親はツアーで飛行機に乗り海外へ行った。
その時向こうで事故に遭い帰らぬ人となった。
新に続き両親も亡くした私は自殺も考えた。
でも、凛に言われた一言で私は生き抜くことを決めた。
『あんたが死んだら、私の親友は誰がやるのよ!美羽ちゃんや空くんのママは誰がやるのよ!あの子達にパパとママの顔も知らないでこれから生きていかせるつもり!?』
この言葉で私は救われた。
この事を知っている香さんは私をすごく助けてくれた。
だから今回も、私の事を思って。
…香さんが、私に顔を近付けたとき同じ香りがした。
新と、同じ香りが…。
しばらくすると、主治医の話を聞き終えた香さんが戻ってきた。
その顔は笑っていても何処か暗かった。
「結衣。」
「はい?」
「お前、最近無理してないか?過労だって。」
「そんなことないですよ。過労ならすぐに退院出来ますよね?」
「でも、それだけじゃなくて。」
「なんですか?」
「あの、言いにくいんだけど…。」
「何ですか?早く言ってくださいよ。」
「脳内血管障害だって…。」
「え…。」
その病気は私の祖父が亡くなった病気だった。
脳の血管が破れてそこから出血する病気。
祖父が亡くなった時は不治の病だったらしいけど、今はちゃんと治療法があるらしい。
「嘘…。」
「あ、でも。まだそんなに進行してなかったから4ヶ月入院してれば治るって。」
「出来ませんよ、そんなの!」
私は勢いよく体を起こした。
美羽や空はどうすれば。
仕事だってそんなに休んだら戻れなくなる。
私はたくさんの事を考えた。
するとその時
「痛ッ!!!」
「どうした!?」
激しい頭痛が私を襲った。
「いや、少し頭が…。」
「ほら、だからお前は休んどけ。お前が心配してるだろう子供は坂上さんに俺から頼んでみるし、仕事は俺から社長に話つけとくから。な?安心して病気治せ。」
「すみません。色々。お騒がせしてしまって。本当にありがとうございます。」
「お礼はいいから、早く元気になれよ。じゃあ、また明日な。」
「あ、明日も来てくれるんですか?」
「あぁ、でも嫌だったら来ないし…。どうする?」
「えっと、じゃあ、お願いします。」
「了解。着替えとか持ってくるから。」
わ、私の下着香さんに見られるのか!?
「あー、大丈夫。坂上さんに頼むから。」
私の考えを悟ったのか、香さんは少し微笑みながら言った。
「そうですよね。」
私も同じような顔で返した。
「んじゃ。」
「はい。ありがとうございました。」
香さんはヒラヒラと手を振りながら病室を後にした。
新の死から、5年がたった。
子供も幼稚園に入り私もある出版社で働き始めた。
5ヶ月くらい働いているとある男の人に出会った。
その人の名前は高橋香(こう)さん。
私の3つ上の職場の先輩。
香さんはとても優しくて新に似ている。
不思議なことに苗字も一緒だった。
こんなことがあるものなんだと実感した。
私はこの事を電話で凛話した。
「へぇー、そんなことがあるんだね。もしかして生まれ変わりだったりして…。」
「もぉー、変なこと言わないでよ。」
「まさか、好きとか?」
「それはない。絶対にない。」
「えー?何で?」
「私は新を愛してるから。」
「でもさ、新が亡くなってから5年だよ?子供もいるしさ。これから先結衣だけじゃ生活苦しくなるよ?」
「そうだけど、新以外の人を好きになんてなれないよ。」
なっちゃいけないんだ。
新がかわいそうだよ。
私だけ幸せになんてなれない。
そんな思いから私の恋は進まずにいた。
「結衣ー?」
「あ、はい!」
香さんが私に話しかけてきた。
私はボーッとしていて気づかなかった。
「どうした?最近おかしいぞ?体調悪いのか?」
「いえ、そんなことは…。」
「顔色も悪いし、熱でもあるんじゃないのか?」
すると、香さんは私の額と自分の額を近付けた。
ドンッ!!!
私は香さんを押してしまった。
そのせいで香さんは床に尻餅をついてしまった。
「あ。あの…ごめんなさい!」
「あ、いや俺は大丈夫だけど。お前本当に大丈夫か?熱かったぞ。熱あるんじゃないか?」
「だいじょうぶ…で…す。」
だんだん香さんが遠くなって二重に見えてしまう…。
どうしたんだろう。私。
「あ、おい!!!」
私は香さんの、その言葉を最後に意識を失ってしまった。
「…ぃ、ゅぃ、結衣!」
誰かが私の名前を呼んでる。この声は…りん。凛だ!
「り、ん…。ここは…?」
「結衣!大丈夫?病院だよ。」
「うん、ありがとう。でもなんで。」
「もう、ビックリしたんだから。いきなり倒れたってあんたの出版社から電話かかってきて。なんか、家族が分からなかったから一番履歴の多い所に電話したら私だったの。しかし、あんた香さんに感謝しなさいよ。一緒に救急車にまで乗って連れてきてくれたんだから。」
「そっかぁ、ごめんね。心配かけて。うん、お礼言っとくね。」
「まぁ、大丈夫ならいいけど。ごめん。私颯太に電話してくる。アイツも心配してたから。」
「うん、わかった。ありがとうって伝えて。」
そう言って、病室を出ていった。
すると、それと同時に香さんが入ってきた。
「結衣、大丈夫か?入るぞ。」
「あ、香さん。ありがとうございました。」
「あぁ、いいよ。全然。」
「あの、私。すいません。香さんを突き飛ばしてしまって…。」
「気にしないで、大丈夫だから。」
「すいません。」
…。沈黙が続いた。
するといいタイミングで
「結衣。ごめん。なんか色々あって大変らしいから私行かなきゃいけなくて…。」
「あ、僕見てますから。どうぞ行って下さい。」
「でも…。」
「おきになさらず。」
「ありがとうございます。じゃあ、またね。結衣。」
「うん。バイバイ。」
私が入る隙間もなく
香さんと凛の会話が終わってしまった。
すると、凛が出ていって少しすると今度は主治医らしき人が入ってきた。
「岡本さん。お体は大丈夫ですか?」
「あ、はい。大丈夫です。」
「少しお話があるのですがご家族の方に連絡を取ってもらえるでしょうか?」
「あの、私…。」
「僕じゃダメですかね?」
「あなたは?」
「この子の上司です。」
「うーん。私は良いのですが岡本さんは…。」
「結衣。いいよな?」
「あ、はい。お願いします。」
私が香さんにお願いした理由。
それは、私の両親はいないから。
2年前。
両親はツアーで飛行機に乗り海外へ行った。
その時向こうで事故に遭い帰らぬ人となった。
新に続き両親も亡くした私は自殺も考えた。
でも、凛に言われた一言で私は生き抜くことを決めた。
『あんたが死んだら、私の親友は誰がやるのよ!美羽ちゃんや空くんのママは誰がやるのよ!あの子達にパパとママの顔も知らないでこれから生きていかせるつもり!?』
この言葉で私は救われた。
この事を知っている香さんは私をすごく助けてくれた。
だから今回も、私の事を思って。
…香さんが、私に顔を近付けたとき同じ香りがした。
新と、同じ香りが…。
しばらくすると、主治医の話を聞き終えた香さんが戻ってきた。
その顔は笑っていても何処か暗かった。
「結衣。」
「はい?」
「お前、最近無理してないか?過労だって。」
「そんなことないですよ。過労ならすぐに退院出来ますよね?」
「でも、それだけじゃなくて。」
「なんですか?」
「あの、言いにくいんだけど…。」
「何ですか?早く言ってくださいよ。」
「脳内血管障害だって…。」
「え…。」
その病気は私の祖父が亡くなった病気だった。
脳の血管が破れてそこから出血する病気。
祖父が亡くなった時は不治の病だったらしいけど、今はちゃんと治療法があるらしい。
「嘘…。」
「あ、でも。まだそんなに進行してなかったから4ヶ月入院してれば治るって。」
「出来ませんよ、そんなの!」
私は勢いよく体を起こした。
美羽や空はどうすれば。
仕事だってそんなに休んだら戻れなくなる。
私はたくさんの事を考えた。
するとその時
「痛ッ!!!」
「どうした!?」
激しい頭痛が私を襲った。
「いや、少し頭が…。」
「ほら、だからお前は休んどけ。お前が心配してるだろう子供は坂上さんに俺から頼んでみるし、仕事は俺から社長に話つけとくから。な?安心して病気治せ。」
「すみません。色々。お騒がせしてしまって。本当にありがとうございます。」
「お礼はいいから、早く元気になれよ。じゃあ、また明日な。」
「あ、明日も来てくれるんですか?」
「あぁ、でも嫌だったら来ないし…。どうする?」
「えっと、じゃあ、お願いします。」
「了解。着替えとか持ってくるから。」
わ、私の下着香さんに見られるのか!?
「あー、大丈夫。坂上さんに頼むから。」
私の考えを悟ったのか、香さんは少し微笑みながら言った。
「そうですよね。」
私も同じような顔で返した。
「んじゃ。」
「はい。ありがとうございました。」
香さんはヒラヒラと手を振りながら病室を後にした。