ともだち、こいびと、たいせつなひと
どれくらい待っただろうか。
大して待ってはいないんだろうけど、家の中で佐々岡が姫菜に何かしてるのではないかと思うと、時間がひどく長く感じた。
そんなことを考えていると、放心状態であろう姫菜と、胡散臭い笑顔を浮かべた佐々岡が玄関から出てきた。
姫菜が佐々岡と離れ、玄関のドアが閉まる。
佐々岡は帰宅するのか駅の方向へ足を進めた。
俺もそのあとを追い、タイミングを見て佐々岡に話し掛けようとしたその時、開くはずのない姫菜の家の玄関が開き、姫菜が飛び出してきた。
そして、チャイムを鳴らすことなく俺の家へ入って行った。
俺は迷った。
佐々岡と会ったあと、俺の所へ来るってことは何かあったに違いない。
だけど、これからの事を考えると今は佐々岡と話をするのが先だと踏んだ。
俺は姫菜を後にして佐々岡を追った。