ドSな王様ひろいました⁈

⚫︎王様が居なくたって

ジリリリリリリ!

と、けたたましい目覚ましの音に起こされた私は、なんとかそれを消し、ムクッと起き上がる。

「…いない」

第一声が、それだった。

私を抱きしめていたはずの瀬名の姿がどこにもない。

…抱き締められた感触はまだ残っているというのに。

…まさか、今までの事全部、夢?

「…違う」

…現実だ。買ってもらった服が、ハンガーにかけられてるし、水族館で買ってくれたイルカのネックレスも、ペンギンのぬいぐるみもちゃんとある。

なんとも、夢と現実を行き来してるような、変な錯覚を覚えながら、私は仕事に行くため、身支度を始めた。

…たった2、3日、一緒にいただけなのに、何でこんなにポッカリと穴が空いた様な気がするのか。

居なくなって清々するはずなのに、無意識に、瀬名の姿を探してしまう。

…もう、戻ってこないかもしれない。

そんな思いが頭に駆け巡る。

「…いいじゃない別に。居ない方がいいに決まってる」

自分にそう言い聞かせ、仕事に向かった。

「…おはよ、江藤さん」
「…おはようございます…清水主任」

本当に、困った。

「…あ、専務が出張に行くみたいだな」
「…ぇ?…専務。…そう言えば、見た事ない。専務の顔」

私の言葉に、清春は、目を見開いた。
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