ドSな王様ひろいました⁈
頭は混乱してるのに、習慣とは恐ろしいもので、いつも通り家に帰ると、簡単な食事をし、お風呂に入り、髪を乾かすと、テレビをつけたまま、電気を消して、ベッドに潜り込んだ。

…丁度、深夜のお笑い番組が流れていた。いつもなら、笑ってるのに、内容が全く入ってこない。

…頭に浮かぶのは、瀬名の顔。

本当の瀬名は、市原ではなく、一条瀬名だった。…よくよく考えてみれば、私の勤め先を聞いた瀬名は、かなり驚いていたっけ。

…清春の言葉通り、瀬名の兄弟は、双子で、その弟が社長。…瓜二つの顔が、双子だという事を思い知らされた。

『こんなに江藤さんの事が好きなのに』

その言葉を思い出すと、清春のあの切なげな表情が思い浮かぶ。

憧れた、好きだと思った想い人。嬉しい言葉なのに、心に響いてこない。

…それは何故なのか。

…そんな事は、分かりきっている。

…私は、瀬名と言う一人の男が好きなのだ。…瀬名は、私に嘘は何一つついていない。自分の置かれてる状況を包み隠さず話してくれた。

…社名を隠したのは、同じ会社の重役と、平社員だから。瀬名は、そのしがらみを払いのける為に、私と対等にいてくれる為に、あえて話さなかったんだと思う。
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