ドSな王様ひろいました⁈
…なんて、都合の良い考え。本当は真逆かもしれないのに。

…もう、瀬名には会えないかもしれない。いや、会っちゃいけないのかもしれない。

そう思うと涙が止まらなくなった。

…泣いて、泣いて、泣いて。

泣き疲れた私は、いつの間にか眠っていた。

…次の日の朝。重たくなった瞼を、なんとかこじ開けた。

…泣き過ぎたせいで、目が腫れ上がっているんだろう。

…不幸中の幸いとは、まさしくこの事かもしれない。…今日はお休みだ。

狭い視界の中に、人影が見え、…よくよくみれば、私の手をギュッと握りしめて眠ってるではないか。しかも、スーツ姿のままで。

「…瀬名」

「…ん…スッゲーおっかない顔」
「…煩い黙れ」

悪態に悪態で返し、私は使える手で、布団を被った。

それなのに、その布団を容易く剥いだがと思えば、スーツ姿のまま、瀬名が布団の中に潜り込んだ。


「…ちょっ!何やって」
「…俺の事…嫌いになったか?」

「…は?」

キョトンとする私を抱きしめた瀬名が、もう一度、同じ質問をする。

「…春香」
「…困ったなあ」

「…」
「…まさか自分が働いてる会社の重役だとは思わなかったからなあ」

「…」
「…こんなに裏切られた気持ちで一杯なのに、別に、瀬名は私に一つも嘘はついてないし、社名を言わなかっただけだし…どうしても…嫌いになれないの。困っちゃって」

私の言葉を聞き、瀬名はより一層私をギュッと抱きしめた。

「…く、くるしいよ、瀬名」
「…喜べ。お前は一生ずっと俺の傍に居られるんだ」

「……はい??」
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