ドSな王様ひろいました⁈
…やっと、営業部での引継ぎも終わり、今日から正式に専務秘書として働くことになった。

秘書室は、専務室のドアに隣接された小さな個室。壁には大きな本棚があり、たくさんの書類フォルダーが並べられ、その手前にデスクと椅子が置かれている。

専務室と秘書室の掃除を簡単に済ませると、直ぐにパソコンを立ち上げ、今後のスケジュールを確認しながら、手帳に書き込んでいく。

その作業に集中していると、突然秘書室のドアが開いた。私は慌てて立ち上がり頭を下げた。

「おはようございます、一条専務」
「…おはよう、江藤さん」

その言葉が聞こえると、頭を上げた私。…、家の中では見せない険しい表情に、自然と背筋がピンとなる。

瀬名は、私の目の前で足を止めた。必然的に、私は見上げる形になる。…何も言わず、私を見下ろす瀬名を不審に思い、声をかけた。

「…あの、専務?…わっ⁈」

…ここは、会社なのですが?

突然引き寄せられ、ポスッと、瀬名の腕の中。驚くやら慌てるやら、恥ずかしいやら…

「ちょっ!瀬名!離しなさいよ!」
「…江藤さんは、意外と鈍いんだな」

「はぁ⁈」

その言葉にカチンときた私は、何とか瀬名を見上げて、睨んだ。


「…何やってる、永遠(とわ)」

…永遠??…て、え〜⁈
向こうにいる瀬名と、今、私を抱きしめてる瀬名を交互に見た。

体格も、スーツ、ネクタイの色まで同じ。意地悪な笑みも、全て同じ。

一つ違うところがあるとすれば、微妙な声のトーンだった。
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