たった一度きりの青春は盛りだくさん
Episode1
入学祝い
春の気持ちいい風に肌を撫でられながら歩く。
気分は最高。
なんといっても明日から高校生だもんね。
制服が可愛いからっていう不純な理由で志望した、片道1時間の進学校。
隣の家に住む幼なじみにお願いして勉強を教えてもらって、2人仲良く合格した。
「なーなー、ちゃんと前見て歩けよ?」
後ろから声をかけてくるのが、その幼なじみ。
あ、私の名前は佐藤奈々。
で、幼なじみは白石和希。
「え、前向いて歩きよるよー」
前向いて歩かなくても、この道は歩行者と自転車しか通れないから大丈夫。
私の場合はぼーっとしてて転けちゃったりするけどね。
「あのさぁ、何でおばさんのお見舞い俺も一緒に行くん?
合格の報告ならこの前したんやし、奈々だけでええんやない?」
和希はこうして文句を言ってくるけど、なんだかんだで一緒に来てくれる。
根はすごく優しいんだよね。
「あー、なんか、渡したいものあるって言ってたよ」
今向かってるのは、私のお母さんが入院してる病院。
私が中学生になった頃かなぁ。
急に体調を崩して救急車で運ばれて、それからは入院生活が続いてる。
たまに外泊許可が出て帰ってくるけど、あまり長くはいられない。