たった一度きりの青春は盛りだくさん
「奈々ちゃん天パやもんね」
そう、私の髪の毛は天然パーマ。
だから梅雨の時期は毎朝大変なんだよね。
楽に済むようにってショートにしてるけど、それでも少し伸びるとすぐぼわっとなる。
「あ、奈々。ちょうど良かった」
音楽室に向かうのに角を曲がるって時、和希と出会った。
あれ、珍しいな。
昼休みは教室にいるもんだって思ってたのに。
「これ、達川に渡してくれん?」
そう言って差し出されたのは英語の教科書。
5限目は英語だけど、達川くん忘れたのかな。
右下の方に書いてある名前は白石和希だし。
「えー、自分で渡しや。
今から音楽室でお昼食べるんやけど・・・」
『ごめん、先行ってて』と笑子ちゃんに言って、断りモードに入った。
「お願い。他のクラス入りにくいんやもん」
それは反則だよ。
普段『お願い』なんて言わない和希に言われてしまうと、断りにくい。
「・・・分かった」
「ありがとう」
『じゃ、任せた』と言って、和希は4組の教室に向かって歩いて行った。