たった一度きりの青春は盛りだくさん



「でもさ、白石ってそんな飴持っとるイメージない」


森くんが眉間に皺を寄せながら言うもんだから、私は思わず小さく笑ってしまった。


でも、確かにそうだよね。


和希はこんな可愛い飴絶対持ってない。


「これくれたの、和希じゃないよ。

私のクラスの達川くんって知ってる?

和希に頼まれて教科書届けたらくれたんよ」


私が言うと、みんな『分からん・・・』と困った顔をした。


そうだよね。


1年生は全員で240人いるんだもん。


他のクラスの子を全員覚えてる方がすごいよね。


「でも、その達川くんってもちろん男子やろ?

えらい可愛い飴持っとるよね。

妹かお姉さんでもおるんやろか」


笑子ちゃんはうっとりした世界からやっと戻ってきたみたい。


でも、言われてみればそうかも。


達川くんって、この飴以外は可愛い部分なんてないのに。


決して悪い意味じゃなくて、本当にサッカー少年そのものって感じだから。


「んー、そうかもね」


ただ、この飴を目にする度に私の頭には今朝の達川くんの表情が浮かんでくる。


言葉で上手く表現できないけど、すごく寂しそうな顔。



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