たった一度きりの青春は盛りだくさん
迷惑かけてないもん
「奈々ちゃん、雨まだ降りよるー?」
部活終了後、先に片付けが終わった私が窓際にいるのを見つけて笑子ちゃんが叫んできた。
周りの先輩や同級生に『うるさい!』って突っ込まれてる。
私は屋根が突き出してない部分の窓から腕を伸ばして確認してみる。
降ってるって訳ではないけど、完全にやんでるとも言い難い。
「霧雨ぐらい!」
私の周りには人はいないから、思いっきり叫び返した。
すると、今度は注意されないように両腕を使って丸を作って見せてきた。
分かった、ってことなんだろうな。
笑子ちゃんの片付けを待ってたけど、ふと時計を見て焦った。
そろそろ学校出なきゃ電車に間に合わない。
急いで鞄を手に持ち笑子ちゃんに歩み寄る。
「ごめん笑子ちゃん、時間ないけんそろそろ帰るね」
「あ、うん。いつも待たせてごめんね。
気をつけてね、また明日!」
すごい勢いで色々言われて、私もやっと『うん、また明日ね』と言えた。
そして、先輩と同級生に挨拶をして、角を曲がった階段で前を歩く森くんを発見した。
10人の中で電車通学は、私と森くんだけ。
先輩の中にも何人かいるけど、みんな私とは反対方向。
そして、森くんも例外ではない。
駅まで行けば、偶然和希と会わない限り1人なんだよね。