たった一度きりの青春は盛りだくさん
私には2人きょうだいがいて、お父さんもいるから寂しいとは思わない。
だけど、こうしてお母さんに会える時は嬉しくて舞い上がっちゃう。
「あ、和希さぁ、高校でもサッカー部?」
私は和希の前を歩くのをやめて隣に立った。
こうするといつも思うんだけど、和希って背伸びたよね。
昔は小柄な私とあんまり変わらなくて『双子みたいね』なんて言われてたのに。
実際、和希は小さい頃可愛くて女の子みたいだったし。
「うん、そのつもり。奈々は吹部?」
「うん、そのつもりー」
『えへへ』って笑うと嫌そうな顔をされた。
この笑い方、テンションが上がってる時の私の癖なんだよね。
感情を抑えきれなくなって、ついしちゃう。
「ほら、病院着いたけんもう静かにしろよー」
「はーい」
小声で返事をして、急にお兄さんになった和希の背中に着いていく。
お母さんの病室は病状によって変わることがあるから、いつも迷子になりそうになる。
一応病室は控えてるけど、そのメモは和希に託して私は着いて歩くだけ。
「はい、今回はここだって」
そう言われて和希の背中から視線を上げると『佐藤奈都子様』って書いたプレートが目に入った。
今回は個室なんだ。
調子、悪いのかな。