たった一度きりの青春は盛りだくさん
でもまぁ、今日だけで似たようなこと3回も言われてるからなぁ。
周りから見ると余程アンバランスな組み合わせなんだろうな。
「あ」
「え?」
あと少し、本当に何十メートルって時に、前を歩く後ろ姿を見つけた。
見間違える訳がない、あれは和希だ。
「かーずーき!」
私は森くんをそのままに、和希に向かって猛ダッシュ。
傘をさしてるけど、もう帰るだけだし別に良いや。
「あ、奈々。お疲れ」
「和希もお疲れ!」
今日は一日、雨でテンション下がってたのに、帰り道1人じゃなくなっただけでテンションが上がる。
「ちょ・・・佐藤!」
すっかり森くんのことを忘れていた私は、森くんの叫び声で振り返った。
しまった、置いてきぼりにしちゃった。
私は少し反省したんだけど、森くんが叫んだ理由はそれじゃなかった。
「ケータイ落としてった」
駆け足で追いついてきた森くんに差し出されたのは、他でもない私のケータイ。
今朝、達川くんが反応したストラップがついてるそれだった。
「え・・・あ!ありがとう!」
慌てて受け取って、画面が割れてないか、電源が入るかを確かめる。