たった一度きりの青春は盛りだくさん
朝みたいに座る場所はもちろんなくて、私は和希と一緒にドアの近くに立つ。
上の吊り輪には届かないから横の手すりを持って、足を踏ん張った。
「さぁ・・・きょうだいの話はしたことないけど、どして?」
そっか、男子ってやっぱりそういう話ってあんまりしないのかな。
「教科書届けた時、お礼にって可愛い飴くれたんよ。
桜色の、桜の形したの」
まだ開けてないから笑子ちゃん情報だけどね。
「へぇー、何か意外やね」
「やろ?今朝もこれに反応したし、桜好きなんかな?」
私はケータイのストラップを和希に見せながら言った。
和希はちらっとストラップを見て、窓の外に視線を移した。
「さぁ・・・気になるなら本人にきいてみたら?」
ため息をつくような感じで言われた。
もしかして、少し怒ってるのかな。
しつこくききすぎたのかも。
「うん・・・タイミングがあればきいてみる」
これ以上怒らせたくないから、それから何駅かの間、私は頑張って黙っていた。
喧嘩をしてしまっても、すぐに仲直りできると思う。
でも、やっぱり気まずいのは嫌。
大切な幼なじみだもん、できれば普通に仲良くしたい。