たった一度きりの青春は盛りだくさん
琴音の叫び
「いーやーだ!絶対行かん!」
―――ドンッ
「痛ぁ・・・」
私は床に打ち付けた体をさすりながら起き上がって、ベッドから落ちる直前に聞こえた声について考える。
多分、あれは琴音の声。
今の時刻は朝の5時。
私は起きる時間だけど、琴音はまだまだ寝てる時間帯。
それに、琴音の声と一緒にお父さんの声もした気がする。
―――ガチャ
本当なら急いで着替えてお弁当を作るんだけど、なんだか今日はそれどころじゃない。
私はまだ暗い廊下の電気をつけて、1階の居間に向かう。
あかりが漏れてるのが見えたから、2人とも多分そこにいる。
―――ガチャ
でも、その前に階段にさしかかる手前の部屋のドアが開いた。
お兄ちゃんも起きちゃったのかな。
いつもならまだ寝てる時間なのにね。
「さっきの、琴音?」
寝起きの声できかれた。
「うん、多分。びっくりしてベッドから落ちちゃった」
お兄ちゃんは私の言葉に軽く笑って、1階を覗き込んでる。