たった一度きりの青春は盛りだくさん
「様子見に行こうと思って」
私が言うと、お兄ちゃんは『行こ』と階段を下りだした。
今日は0限目行けないかもしれない。
でも、0限目は出欠をとらないから、誰かに伝言を頼めば大丈夫。
「行きたくない!」
「でも、行かんかったらもっと」
「もう、うるさいなぁ!」
ドアの隙間から居間を覗くと、琴音は泣きながら怒ってて、お父さんは完全に困った顔をしてる。
いつも下がり気味の眉がいつも以上に下がってるもん。
もしかして、琴音が『学校に行きたくない』とでも言ったのかな。
でも、何でこんな朝早くに琴音とお父さんが起きてたんだろう。
「あのさぁ」
「あ、ちょっと・・・」
気づかれないように覗いてたはずなのに、突然お兄ちゃんがドアを開けて中に入っていった。
もちろん、それによって一緒にいた私の姿も完全に見られることになる。
4つの目が私とお兄ちゃんに集まった。
仕方なく私も居間に入っていく。
「ちょっと近所迷惑かなーって思うんやけど」
言葉はきつそうだけど、お兄ちゃんの表情は柔らかい。
琴音は今すごく興奮してるから、落ち着かせようとしてるのかな。