たった一度きりの青春は盛りだくさん
「琴音が行きたくないなら、行かんで良いと思う。
行きたくなったら行けば良いと思う。
ほら、勉強やったら私やお兄ちゃんが教えれるし」
世間から見れば、駄目な姉の意見かもしれない。
だけど、学校って、そんな辛い思いをしながら行く場所じゃないと思う。
心の安定がなければ勉強だってできないし、何をしても楽しくない。
何か少しでも楽しみがある状態で行くものだって思うから。
「・・・お姉ちゃん」
少しだけおさまってた涙が、また琴音の目に溜まっていく。
そして、それは目だけでしまいきれなくて、頬を濡らしていっている。
私は思わず琴音を抱きしめた。
こんな風に抱きしめるのは久しぶりで、思っていたよりも琴音は大きかった。
身長が私とほぼ変わらないから当たり前なんだけど、不思議な感じ。
でも・・・いくら体の大きさは変わらなくても年齢は3つ違う。
私が今感じてることを、琴音は既に感じてたんだ。
それはきっと、私が思うよりももっと辛いことだったんだろうな。
お兄ちゃんとお父さんが、さっきの私の発言をどう思ってるか分からないけど、私はとにかく琴音の味方でいたい。
だって、今うちにお母さんがいないのは事実だし。
可哀想とかそういうのは抜きにして、当然のことだと思うから。