たった一度きりの青春は盛りだくさん
泣き疲れて寝ちゃった琴音を部屋に運んで落ち着いた時には、家を出る時間まであと10分しかない時間になってた。
お父さんに『学校まで連れて行く』って言われたけど、朝食を食べずに行ってもしんどいだけだからと断った。
お弁当は諦めるにしても、朝ごはんだけは食べておきたいから。
『色々あって間に合いそうにないけん、2便目で行くね。
1限目には間に合うけん、という伝言です!』
和希は今頃ごはん食べてるだろうなーなんて思いながらメールを送った。
「いただきまーす」
いつもよりは手抜きになった朝食を4人分用意して、2人分はラップをした。
お父さんはまだ時間があるから部屋で休むって言ってたし、琴音は寝てるし。
お兄ちゃんは今日私が乗る時間の電車で大学に行く。
だから急いで準備して、今は私の向かいに座ってる。
「和希に伝えた?」
「うん、今メールした」
朝ごはんを誰かと食べるのは久しぶり。
晩ごはんは基本は誰かと一緒だけど、朝はみんなバラバラだから。
「そっか。
・・・奈々は知っとった?
琴音が学校行きたくないってこと」
お兄ちゃんはごはんを口に運ぶ速さは変えず、でも少しだけ気まずそうに言った。
「ように知っとった訳じゃないけど、なんとなくね」
多分、お兄ちゃんなりに責任とか感じてるんだろうな。