たった一度きりの青春は盛りだくさん
森くんの問い
7限目が終わるチャイムが鳴ると、いつもは音楽室に急ぐ。
だけど、今日は違う。
この時間に帰るのは久しぶり。
入学式から数日間とテスト週間だけだったかな。
「奈々ちゃん、今日は部活ないん?」
リュックを背負った姫ちゃんが私の席にやって来た。
いつもと違う私を見て不思議に思ったんだろうな。
「うん。
先生が出張で鍵閉めてくれる先生がおらんのやって」
「そうなんや。
じゃあ、久しぶりに駅まで一緒に帰ろう?」
姫ちゃんは可愛い笑顔でそう言った。
実は私も誘いたいと思ってたから嬉しい。
「うん、そうしよう」
急いで片付けを終わらせて、立ち上がった。
久しぶりに一緒に帰れるからかな。
姫ちゃん、なんだか嬉しそう。
「奈々ちゃん今日はいつもと違うの多いね」
駅の少し向こうに家がある姫ちゃんは自転車通学。
だから、一緒に帰る時はいつも私の隣で自転車を押して歩いてる。
「朝も遅いし帰りは早いもんね。
あ、プリント明日返すね。
ごめんね、遅くなって」