たった一度きりの青春は盛りだくさん
朝、姫ちゃんに貸してもらったプリントはまだ途中までしかできてなくて、宿題用のファイルに入ったまま。
帰ったら他の宿題と一緒にしなきゃ。
「ううん、来週までに返してくれたら良いよ」
そんなことを言う姫ちゃんは優しすぎるよ。
もうちょっとグイグイいっても良いと思うんだけどな。
ま、そんな姫ちゃん想像できないけど。
「ありがとう。
でも、ちゃんと明日返すからね!」
私が意気込んで言うと、姫ちゃんは驚きながら『うん』と小さく頷いた。
それにしても、姫ちゃんと一緒の帰り道はあっという間。
もう駅が見えてるもん。
「それじゃあ、また明日ね」
名残惜しいけど、晴れてても蒸し暑いこの時期、姫ちゃんを引き止める訳にはいかない。
ゆっくり自転車に跨がる姫ちゃんを見守る。
「うん、また明日ね。
気をつけて帰ってね」
「うん、姫ちゃんも」
お互いに『バイバイ』と手を振り、私は姫ちゃんが見えなくなるまで見送った。
駅に入ると、同じ制服を着た子がちらほらいる。
進学校ってこともあるのか、うちの高校はわりと帰宅部の子が多い。
まぁ、週に1回しか活動しない部活もあるから、ここにいる子みんなが帰宅部とは限らないけど。