たった一度きりの青春は盛りだくさん

さくら飴を求めて




「お姉ちゃん、どっか行くん?」


帰宅後、部屋に荷物を置いて小さな鞄にお財布だけ入れて階段を下りようとしたら、琴音が部屋のドアを少しだけ開けてこっちを見てた。


今朝は随分取り乱していたけど、落ち着いたみたいで良かった。


「うん、スーパーにね。

琴音も一緒に行く?」


言った後で、もしかしたら中学の友達と会うかもしれないし、失敗したかなと思った。


でも、琴音は笑顔で『うん』と頷いて一度部屋の中に引き返した。


この様子だと、やっぱり今日は学校休んだんだ。


いつも、私が家を出る時間にはまだ寝てるし、私が家に帰る時間には既に学校も部活も終わってるから、もし琴音が学校を休んでても家族からきかないと分からない。


でも、今日は私が帰るのがいつもより早かったから、もし琴音が学校に行って部活にも出てたなら、まだ帰ってないはずなんだ。


一応、琴音も吹奏楽部だからね。


「お姉ちゃん、お待たせ」


部屋から出てきた琴音は、私と同じように小さな鞄を持っていた。


私と琴音のこの鞄は、何年か前にお母さんが一時帰宅した時、カタログでお母さんが選んでお父さんが注文してくれたもの。


『誕生日プレゼントあげれてないけん』って申し訳なさそうに言ってたっけ。


「何買うん?晩ごはんの材料?」


普段、晩ごはんはお父さんに任せてるから、私が作るのかと思って喜んでくれてるみたい。


帰るの早かったし、私が作ろうかな。


朝ごはん作る時に冷蔵庫の中は確認したから大丈夫だし。



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