たった一度きりの青春は盛りだくさん
「それもあるけど、飴を買いたいんよね」
私が言うと琴音は頭の上に?を何個も浮かべたような顔をした。
そりゃそうだ。
琴音は私が達川くんにもらった飴の話をしらないし、今日の和希とのやり取りも知らない。
「桜色の桜の形した飴、知っとる?」
「あ、それってもしかしてさくら飴のこと?
知っとるよ!あれおいしいよね!」
急にテンションが上がった琴音に少しびっくりした。
でも、元気がないよりは良いよね。
「知っとったんや。
あれね、この前クラスの子が1つくれたんよ。
そしたらね、和希が欲しいって言い出してね」
「えー、和希くん、あんなん好きやったっけ」
さすが、年齢は違うけど琴音も和希の幼なじみなだけはある。
和希があんな可愛い飴を欲しがるなんておかしいもんね。
まぁ、森くんも似たようなこと言ってたけど。
それにしても、駅での森くんの言葉は衝撃的だった。
「そんなことなかったと思うんやけどね。
あ、じゃあ琴音、そのさくら飴、このスーパーにある?」
なかったら、少し遠いけど他のスーパーも当たってみなきゃ。
「さぁ・・・琴音も前に友達にもらったことあるだけやけん」
『友達』ってワードにドキッとしたけど、また辛くなった訳ではないみたいだから良かった。