たった一度きりの青春は盛りだくさん
「あ、お兄ちゃん帰っとる」
玄関の横に、さっきまでなかったお兄ちゃんの自転車が置いてある。
琴音は嬉しそうに言って、『ただいまー』と家の中に入っていく。
今朝はあんなだったけど、琴音はお兄ちゃんのことが大好きだもんね。
「ただいまー」
私も家の中に入って、まずは台所に向かう。
買った食材をしまわないといけないから。
「あれ、今日は早いんやね」
てっきり部屋にいると思ってたお兄ちゃんは台所にいた。
私はスーパーの袋の中身を出しながら答える。
「うん、部活休みになったけん」
「ふーん。あ、これは?」
お兄ちゃんは何も言わなくても、片付けを手伝ってくれている。
昔から私と一緒にお母さんの手伝いをしてたからだと思うけど。
「あ、それは私と琴音の」
奪い取るようにして、お兄ちゃんの手から2つのさくら飴を取った。
別に焦る必要なんてないんだけど、琴音のはともかく私のはなんだか恥ずかしいから。
「珍しいやん、奈々がお菓子買うん」
「和希くんにあげるんやってー」
いつの間に来たのか、琴音が私の後ろからからかうように言った。
もう・・・知られたくなかったのに。