たった一度きりの青春は盛りだくさん
普段は常識人そのものなのに、こういう時ちょっと面白いんだよね。
「佐藤さん、白石と帰んの?」
達川くんの席に集まってきた1組サッカー部組の1人にきかれた。
私と姫ちゃんの会話・・・きいてなくて当然か。
「何で?」
「いやぁ、2人が一緒に歩くとこ、そろそろ見たいなぁ、みたいな」
あー、なるほど。
私と和希が幼なじみってまだ信じられなくて、一緒にいるとこを見て納得したいってことか。
そんなの、ほぼ毎朝一緒に登校してるんだからチャンスはいくらでもあるのに。
まぁ、みんな反対方向だから会わないんだけど。
「わざわざ見んでも私と和希はちゃーんと幼なじみです」
わざと丁寧語で言って、今度こそ席に戻る。
テストだったから机の中は何も入ってなくて、片付けるのは筆記用具だけだけどね。
「奈々ちゃん、白石くんと帰るん?」
荷物を準備できた姫ちゃんが、ちょっとだけ不安そうに言った。
あー、サッカー部組の言葉がきこえて勘違いしちゃったのかも。
姫ちゃんを不安にさせるなんて、ひどい奴らだ。
「ううん、姫ちゃんと帰るよ。
和希とは偶然会ったら一緒に帰るけど、約束してる訳じゃないから」
「そっか、良かった」
安心したように笑う姫ちゃんも、やっぱり可愛い。