たった一度きりの青春は盛りだくさん
姫ちゃんと一緒に帰るのは、琴音が『学校に行きたくない』と初めて訴えたあの日以来。
あれからまだ少ししか経っていないのに、随分と長い間一緒に帰ってなかった感じがする。
「あとは夏休みを待つだけやね」
成績は上位の方で一言でいうと真面目な姫ちゃん。
そんな姫ちゃんでもやっぱり夏休みは楽しみなんだね。
「うん。補習もあるし休みって感じはせんけどね」
私が苦笑いで言うと、姫ちゃんも苦笑いをして『でも』と言った。
「もし時間が合って、奈々ちゃんさえ良ければ一緒に遊ぼね?」
自転車を押しながら私の方を見て首を傾げた姫ちゃんは最高に可愛い。
姫ちゃんの誘いを私が断る訳がないよ。
「うん、もちろん!楽しみにしてるー!」
私はこの喜びをどう発散させれば良いのか分からなくて、足をジタバタさせた。
姫ちゃんはそんな私を見て嬉しそうに可愛く笑ってる。
GWには時間が合わなくて一緒に遊べなかったんだよね。
「何しよん、恥ずかしいけんやめ」
突然、後ろから姫ちゃんのものではない声が聞こえた。
だけど、その声は知ってるものだったから私はゆっくりと後ろを振り返った。
「一緒におる姫田が可哀想」
もちろん、そう言い放ったのは和希。
そして、言うだけ言って私と姫ちゃんを追い抜いて駅の方へ歩いて行く。