たった一度きりの青春は盛りだくさん
勉強を教えてくれた和希のおかげなのは当たり前。
素直に言えないけど、すごく感謝してる。
「良かったやん。
俺もまあまあ。中間テストよりはできたかも」
和希は何も思わず普通に言ってるんだろうけど、それってものすごく良いってことじゃん。
また手の届かないところに行ってしまいそう。
「あ、来た」
小さく電車の音がきこえたと思ったら和希がそう言って、2人ほぼ同時に立ち上がる。
それにしても、お腹すいたな。
琴音、今日はお母さんのところに行ってるからお昼は一人。
普段最大6人で囲む食卓に一人でつくのは正直寂しい。
昨日までは琴音がいたから大丈夫だったけど。
中間テストの時は和希と一緒に食べたっけな。
あの時は和希から『一緒に食べる?』って言ってくれたけど、今回は何もない。
琴音がいるかもって気を遣ってるのかもしれないけど、今日は言ってほしいな。
「あー、腹減った」
普段の時間帯は帰宅ラッシュと重なって満員電車だけど、今日みたいに早く帰る日は空いてる。
だから、朝みたいに2人並んで座って空腹と戦ってる。
「うん、お腹空いたね。
和希のお昼は何なん?」
和希のお母さんは専業主婦だから、今日の昼食もおばさんの手料理なんだろうな。