たった一度きりの青春は盛りだくさん
「さぁ・・・母さんの気分次第やけん分からん」
そりゃそうだ。
和希が自分で作る訳じゃないし、おばさんは『何が良い?』って子どもにきくタイプでもないし。
「・・・あ。母さんから」
目の前に出されたのは、画面が表示された状態の和希のケータイ。
一瞬訳が分からなかったけど、受け取って落ち着いて読んでみると、胸が温かくなった。
『琴音ちゃん、奈都子さんとこ行くみたいやけん、奈々ちゃん一人やろ?
良かったらってお昼誘って下さい。母』
白石家って、何でこうもみんなが優しいんだろう。
親戚でもなくて、お隣さんっていうこと以外は特に何の繋がりもないのに。
本当に欲しい時に貰える優しさに、胸の奥から何かがこみ上げてきそうになる。
「返信して良い?」
何とか我慢しながら少し変な声で和希にきくと、『どうぞ』ってすぐに返事が返ってきた。
『おばさん、奈々です。
お昼ご飯、お言葉に甘えてご馳走になります。
ありがとう! 奈々』
送信ボタンを押して和希にケータイを返してからも、胸の温かさは消えない。
なんだかすごく嬉しくて、知らない間ににやけてると、隣から『キモい』と突っ込まれた。