たった一度きりの青春は盛りだくさん
雨の日の朝
私と和希が朝乗る電車は、始発。
初めこそ辛かったけど、1か月もすれば慣れて、梅雨入りをした今はもう平気。
「奈々」
駅のベンチで本を読んでると、和希が来た。
私は駅まで歩きだけど、和希は自転車だから私よりゆっくりしてる。
3月までは私にも自転車があったんだけど、妹にあげちゃった。
お兄ちゃんのをもらうって手もあったけど、試しに跨ってみたら高すぎて無理だった。
私のだけ買ってもらうのも申し訳ないし、家計も決して楽な訳じゃない。
普段の生活で困ることはないからと、お父さんからの申し出を断った。
「おはよう」
見上げた和希の前髪が濡れていて、私が来るときは降ってなかった雨が降り出したことが分かった。
今の時期は本当に傘がお守り。
ないと不安になって仕方がないもん。
「今日の体育、中やろか?」
ホームに出て和希が空を見上げながら言った。
待合室にいたから分からなかったけど、結構降ってたんだ。
「多分そうやね。嫌やなー、体育館」
体育は決して嫌いな訳じゃないけど、体育館での体育は嫌。
狭い中に大勢集められて息が苦しくなる感じがするから。
「あ、和希は何限目なん?」
うちの高校は1学年6クラスで、私は1組、和希は4組。