たった一度きりの青春は盛りだくさん
教室に入ると、いつものようにいくつかの塊ができている。
でも、今日はいつもとは違って1つのグループがやけに大きい。
何があったのかと不思議に思いながらも、姫ちゃんと『おはよう』と挨拶を交わしてそのまま席に着く。
「あ、佐藤さん来た!」
「え?」
廊下にまで聞こえるんじゃないかってくらい大きな声で名前を呼ばれて、私は勢いよく振り返った。
声の発信源は、やけに大きいあのグループ。
今気づいたけど、そのメンバーには達川くんを含むサッカー部5人もいる。
あとは、いろんな運動部のクラスメイトがちらほらと。
「明後日の花火、見に行く?」
「へ?」
まだ主人の来てない私の前の席に座ったこの人は確か、サッカー部。
つまりは達川くんと仲良しなんだけど、何でその質問をした。
明日と明後日にこの辺で大きなお祭りがあるってことは知ってる。
小さい頃に1度だけ、家族で来たことがあるから。
そして、その2日目の夜には花火があがるってことも。
だけど、行くか否かの質問を私にする理由が分からない。
「あー・・・明日と明後日ってコンクール前の最後の土日なんよね。
やけん、特に力入れて練習すると思うし、行けんと思う」
花火見てたら帰るの遅くなって次の日しんどくなっちゃうし、部活なくても無理だな。
「でも、花火って8時から9時までよ。
白石も来るはずやし、帰りは一緒に帰ればええやん」