たった一度きりの青春は盛りだくさん



先輩がそう言った時、ちょうど正門に着く頃だった。


「あ、はい!さようなら!」


私は頭を下げて、先輩を見送った。


ほんと、明日寝坊しないようにしなきゃね。


「佐藤さん、お疲れ」


正門にいたのは、達川くん一人だった。


他のみんなはまだ来てないのかな。


てっきり和希たちもいると思ってたのに。


「達川くんもお疲れ様。

他のみんなはまだなん?」


私がきくと、達川くんは一瞬目を泳がせた。


どうしたんだろう。


「あいつら、待ちきれんで先行くって。

俺が佐藤さんを待つ係に選ばれたって訳」


あ、そうだったんだ。


悪いことしちゃったかな。


もっと急いで来るべきだったかも。


「じゃあ、行こっか」


達川くんが笑って先に歩き出したから、私も慌てて追いかけて少し後ろを歩く。


和希と森くんの隣だったら普通に歩けるんだけど、達川くんの隣って普通には歩けないんだよね。



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