たった一度きりの青春は盛りだくさん



「奈々!やっと見つけ・・・」


私が達川くんの頭頂部から目が離せなくなって何十秒経っただろう。


この賑やかな中でもはっきりときこえるくらい大きな声で名前を呼ばれたと思ったら、すぐ近くに和希が立っていた。


その和希も達川くんの姿を見て動けなくなってる。


ってか、達川くんも和希の声きこえただろうに、頭を下げたまま。


それにしても和希、肩を上下に動かしてる。


息も荒れてる。


こんな和希、体育や部活でしか見たことないかも。


心配して探しに来てくれたんだ。


私の思考はやけに冷静。


まずは達川くんに何か言わないといけないって分かってる。


「な、奈々!達川も、みんなあっちにおるけん、行こ。

ほら、花火みんなで見よや」


和希はそう言って達川くんを動かそうとする。


でも、達川くんは動く気配がない。


どうしよう、私のせいだよね。


私が何も言わないからだよね。


「あのね、達川く」


「ごめん、佐藤さん。

またでええけん、白石と行って。

白石、ごめん、俺今日は帰るわ。

佐藤さん、また明日ね」


やっと顔を上げた達川くんは、早口でそう言って、たこ焼きと飲み物をそのままにして消えてしまった。



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