たった一度きりの青春は盛りだくさん
『わない』じゃなくて『えない』
久しぶりの花火はそれはそれは綺麗だったんだけど、私の中には何も残らなかった。
ずっと、和希に達川くんのことをどう説明しようか考えていたから。
「奈々、降りるよ」
結局説明せずになんとなく気まずいまま、和希と一緒に家の最寄り駅まで帰って来てしまった。
時刻は夜の10時すぎ。
普段ならとっくに宿題に取り掛かってる時間だ。
「ねぇ和希」
自転車の鍵を外している和希に声をかける。
和希は手は止めずに『ん?』と私にききかえした。
「今から私が何を言っても、和希と達川くんの関係が悪くなることはない?」
友達の一人である男子に告白されたことを、いちいち幼なじみに報告するなんて、多分あんまりないことだから。
でも、今の私がするべきことは、和希がして欲しいと思っていることをすること。
それと、私自身、初めての経験で頭の中がパンクしそうだから誰かに相談したい。
今の私にとっては女友達に相談するよりも和希に相談する方がしやすいし。
「は?そんなことないと思うけど。
まぁ、内容にはよるかもしれんけど、俺と達川が本当の友達やったら多少は気まずくなったとしても、また元に戻れるって」
和希は私が欲しい言葉をくれた。
よし、和希にはちゃんと隠さず話して相談しよう。
和希なら、ちゃんと話をきいてくれる。