たった一度きりの青春は盛りだくさん
Episode2
姫ちゃんday
「奈々ちゃんなんか嬉しそう」
私の向かいに座ってジュースを飲んだ姫ちゃんは不思議そうにそう言った。
そろそろお盆の今日は、念願の姫ちゃんと遊ぶ日。
姫ちゃんの家の周りの方が遊べる場所は確実にあるんだけど、姫ちゃんの希望で私の家で過ごすことになった。
なんでも『奈々ちゃんがいつもどこから来てるのか見てみたい』ということだそう。
「あ、実は今日ね、お母さんが帰って・・・」
テンションが上がった私は、思わず普通に嬉しそうな理由を話してしまいそうになった。
でも、まだ誰にもお母さんが入院してるとは言ってないんだ。
琴音が学校に行けなくなった理由でもある『かわいそう』と思われたくないから。
「ん?お母さんが帰って来るん?
じゃあ久しぶりにお母さんといっぱい話せるんやね」
でも、姫ちゃんはごく普通に私の言葉に応じてくれた。
「えっと・・・私、お母さんが普段家におらんって言っとったっけ」
「ううん、きいてないよ。
でも、なんとなくそうかなって思いよった。
お弁当自分で作りよるらしかったし、時々きく家の話でなんとなく」
あ、そうだったんだ。
私は自分で言わなければ分かることはないと思い込んでいたけど、こうして私のことを見てくれる友達には分かっちゃうんだ。
「そっかぁ、ごめんね姫ちゃん。
私のお母さん、実は入院しとって・・・。
かわいそうって思われたくなくて黙っとったんよ」