たった一度きりの青春は盛りだくさん
時刻は17:20になった。
私は姫ちゃんを玄関で待たせて居間に入る。
「駅まで姫ちゃん送って来るけん」
視線は床に向けて、テレビを見ているであろうお兄ちゃんと琴音に言った。
テレビの音がきこえたから誰かいるのは確かだもん。
でも、誰からも返事がないから不思議に思って顔を上げた。
「姫ちゃんって高校の友だち?」
そう言ったのは笑顔のお母さん。
そっか、さっきやけに1階がにぎやかだと思ったけど、お母さんもう帰ってたんだ。
「あ、うん。
お母さんおかえり」
「ただいま。
玄関まで送らせてね」
お母さんはそう言ってテレビの前から立ち上がり、私と一緒に玄関まで歩いて来た。
「姫ちゃん」
玄関でドアの方を向いて座っていた姫ちゃんは私の声で立ち上がって振り返った。
「こんにちは。
奈々の母です。
いつも奈々がお世話になってます」
普段一緒にいないお母さんだから、こういう言葉をきくのはすごく新鮮。
「あ、いえ!
お世話になってるのは私の方で・・・」