たった一度きりの青春は盛りだくさん
「んー・・・」
和希が声を出したもんだから、私は慌てて和希から目をそらして問題を解くふりをする。
でも、数秒が経ってもそこから和希の言葉が続くことはなくて、寝言だったと気づく。
紛らわしいことすんな!
なーんて、起きていたら言ってやるんだけど、いくらなんでも人の睡眠を邪魔する趣味はない。
「な・・・な・・・」
また声を出すからびっくりしそうになったけど、さっき学習したから大丈夫だった。
それにしても、『なな』って、数字の7のこと?
それとも、私のこと?
一体どんな夢をみているんだろう。
寝言に話しかけたらダメだってきいたことあるからしないけど、『はーあーい』って返事をしたい気持ちになってしまった。
―――コンコン
開けたままにしていたドアがノックされて振り返ると、お兄ちゃんが立っていた。
姫ちゃんがいる間はクーラーつけてたんだけど、基本的にはクーラーつけないんだよね。
「もうできるけんおいでって。
・・・和希まだ寝よったん」
「うん、分かった。
和希起こしてから行くね」
お兄ちゃんは『りょーかい』と階段を下りていった。