正義の味方に愛された魔女4
1 狂言騒動
「百合さん、おはようございます。
今日もよろしくお願いします」
「おはよう、沙耶ちゃん。
土日のネット販売分の梱包、まだ終わってないのよ。
もうすぐ集荷のお兄さん来ちゃうのに。
銀行行って両替もして来なきゃならないし。
梱包、代わってくれるかな?」
「あーあのお兄さん、開店してすぐ来ちゃいますからねー。
はい、行ってらっしゃい」
《ネットショップの方も売れてるみたいだもんね。
店長ブログは面白いし、商品の画像もきれいだし、説明も解りやすいけど…。
他に何かネットで売り上げ伸ばすコツみたいなの、あるのかなぁ……今度聞かなきゃ》
そんなことを考えながら梱包を終え、どうにか間に合って集荷の人に荷物を預けることができた。
掃除をしていると、
カランカラ~ン。
ドアベルが鳴って、女性が一人来店した。
「いらっしゃいませ」
《私を……見てる?知らない人だけど…。
20代後半…くらい?大人っぽいだけで、もう少し下かも…。
あ、アロマオイルの棚に行った。
もう少し様子見よっと。
百合さんが、お客さんにすぐついちゃダメって、初めに教えてくれたし、
最近は声かけのタイミングがちょっとは判るのよね》
「あのぉ……」
「はい、何かお探しでしたか?アロマオイルでしょうか」
「いえ、ち、違うんです。
今日は、内田百合さんはいらっしゃらないのですか?」
《内田……もう、荒川百合さんだけどね、まあ、知らないか》
「オーナーはあいにく外出していますが、すぐに戻ると思います。
奥でお待ちになりますか?」
「あ…はい、そうさせていただきます」
店の奥の応接スペースにその女性を案内し、コーヒーを出した。
「あの、貴女はここの店員さん?」
「はい、アルバイトの石川沙耶です」
「……そう…。
内田隼人さんは、こちらによく立ち寄るの?」
《隼人さん?……週末と平日、合わせて週に4日くらい私を送りに来てくれるけど……。
この人は隼人さんのお知り合い?》
「はい、よくいらっしゃいますよ?」
「へー、以前は『たまに』だったはずだけど。
私と別れて暇になったのかしらね?」
《あ……この人が、元カノさんでしたか…。
綺麗な……人で……大人だなぁ》
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